老化は遅らせられる時代へ。
そのカギとなる話題の成分「NMN」とは?

老化とは一体なんでしょうか。歳を取ること? 要介護になること?老化と聞いて浮かぶお悩みはさまざま。対策する方法もたくさん登場しています。そんな、私達の常識を大きく変える“老化制御の可能性を秘めた成分”が、世界中の研究者から注目されています。それが、次世代成分NMN。今回は、その注目の成分NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が老化制御にどのようにアプローチするのか、どのような成分なのか、世界で初めてNMNの臨床試験を実施し、NMNの研究を最前線でされている慶應義塾大学医学部教授の伊藤裕先生に詳しくお伺いしました。

慶應義塾大学医学部 内科学(腎臓・内分泌・代謝)教授
医学博士 伊藤 裕 先生

京都市生まれ。1983年京都大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科博士課程修了。米国ハーバード大学、スタンフォード大学医学部にて博士研究員、京都大学医学部助教授を経て06年から現職。慶應義塾大学病院糖尿病先制医療センター長。専門は内分泌学・高血圧・糖尿病・再生医学・抗加齢医学。世界初「メタボリックドミノ」を提唱。「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」のエビデンスなどを発表し、NMNの人体投与を最前線で進めている。

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そもそも、老化とは?

「老化」というと、歳を重ねるごとに体全体が何となく衰えてきたなというイメージを持っている方が多いと思います。これを医学的に説明すると、人生の時間の流れの中で体をつくっている様々な臓器の機能が徐々に低下していくこと、となります。

誰でも年を重ねるうちに、体の機能が全体的に低下していきます。これは仕方がないことで、「生理的老化」と呼ばれています。

しかし、ある臓器の機能が著しく低下してしまうと、その影響が他の臓器にも及び、体全体のバランスが大きく崩れて生理的老化が著しく進みます。これは、「病的老化」と言われます。

たとえば、ちょっと物忘れがひどくなってきたとか、トイレの回数が増えてきたといった生活に支障がない程度の変化は生理的老化です。しかし、生理的老化が著しく進み、普通の生活ができない、誰かの助けを借りないと生きていけないという状態になってしまったら、これは病的老化となります。

病的老化が進むと、動脈硬化症・骨粗しょう症などが引き起こされますが、これは脳や血管や骨の老化が進んだ結果と言えます。

現在ある老化対策というのは、こうしたある臓器に起こった病的老化に対して、どう対応していくのか、というものが多いと思います。

<まとめ>

  •  老化とは、年齢とともに様々な臓器の機能が徐々に低下していくこと。

  •  老化には、「生理的老化」と「病的老化」の2種類がある。

  •  「生理的老化」とは、日常生活に支障がない程度の体の変化。

  •  「病的老化」とは、生理的老化が著しく進み、普通の生活ができないほどの変化。

  •  現在の老化対策は、「病的老化」へのアプローチが多い。

NMNは、よくある老化対策と違う?

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)が現在の老化対策と違うのは、体の様々な臓器で進んでいく老化の速度を全体的に制御する作用が期待できること。

多くの人が恐れている老化というのは、生理的老化が著しく進んだ病的老化です。ですから、その老化の速度を緩やかに安定に制御することで、病的老化を防ぐことができると考えられます。

NMNは、どこか1つの細胞ではなく、すべての臓器の細胞や遺伝子に働きかけるので体全体の老化の速度を制御できる作用があるのです。

NMNは体内に吸収されると、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)に変換されます。このNADが細胞や臓器を動かすエネルギーを生み出し、ミトコンドリアの働きを活発にする「サーチュイン遺伝子」と呼ばれる遺伝子に働きかけます。

サーチュイン遺伝子は長寿遺伝子ともいわれていて、全身の臓器の老化制御に重要な役割を果たしています。年を重ねたり、悪い生活習慣を続けるとその働きが低下することがわかっています。

事実、サーチュイン遺伝子の働きが悪くなると病的老化が起こりやすくなり、寿命が短くなることが動物実験で示されています。

NMNから変換されたNADは、このサーチュイン遺伝子を活性化させるのです。しかし、NADそのものも加齢により減少していきます。これが老化の原因のひとつとも言われています。

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<まとめ>

  • NMNは、体全体に働きかけ生理的老化の進行を緩やかにする。

  •  NMNは体内に吸収されるとNADという物質に変化する。

  •  NADはサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させる。

  •  サーチュイン遺伝子の働きが悪いと、病的老化が起きやすくなり、寿命が短くなる。

  •  NADは加齢により減少。老化の原因のひとつと言われている。

摂るならNAD?それともNMN?

実は、NADは消化管で分解されるので、直接摂取しても吸収することが難しいです。

NMNは、あらゆる生物、植物の細胞に存在し、我々の体でも産生しています。NMNは、人工的に合成された化学物質ではないので我々の体にとって非常に安全なものです。

しかし、NMNは腸で分解されるため、口から摂取する場合は、結構な量を取る必要があります。例えば、NMNを125mgを摂取するために必要な量を野菜などで換算すると、ブロッコリーで2000房。栄養満点と言われるアボカドでも200個食べなければなりません。NMNは現状では大量生産が難しく、今後の研究の課題の一つでもあります。

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<まとめ>

  • NADを摂取しても、消化管で分解されるため吸収されにくい。

  •  NMNはあらゆる生物に存在しており、体内でつくられる安全な物質。

  •  NMNは腸で分解されるため、経口摂取する場合は大量に摂る必要がある。

  •  NMNは大量生産が難しく、今後の研究課題である。

NMNが、実際に老化を抑制!

NMNの研究が始まって十数年がたちますが、マウスなどの動物を使った実験ではかなりの成果が出ています。NMNを1年間投与すると、明らかな抗老化作用が確認でき、加齢に伴う幅広い病気が改善することがわかってきています。

たとえば、NMNを摂取した摂取群と摂取をしなかった対照群を比べた実験では、高脂肪の食事を食べさせた場合、対照群に比べて摂取群では体重増加が抑制できました。

また、血管の状態が衰えた老齢群にNMNを投与した結果、動脈の柔軟性が若齢群と同じぐらい改善されることもわかりました。

ここ数年ではヒト試験も実施され始めており、ヒトに対して安全であるということも徐々に明らかになって、疾病リスクが改善される可能性が期待されています。近い将来、「老化」という考え方そのものが変わるかもしれません。

<まとめ>

  • マウス実験では、NMNを1年間投与した結果、明らかな抗老化作用を確認。
  • ヒト試験も実施され始め、ヒトに対する安全性も明らかに。
  •  疾病リスク改善の効果が期待、将来の「老化」の概念を変えるかもしれない。

<最後に>

単に命を延ばす「長寿」ではなく、自分らしくはつらつと元気でいられる人生のために、NMNは非常に期待できる成分です。若々しくあるために健康に気をつけていても、「あれ?やっぱり?」と老化を感じ始めたような人や、少しでも老化を遅らせたいと考えている人にはおすすめしたいですね。NMNが手軽に摂れる方法もありますので、私たちにとって当たり前の存在になる日も来るかもしれません。

NMNに関するさらに詳しい情報はこちら

2022.09.13
kenbilife編集部